「通俗食物養生法」の中で石塚が説く提言ポイントを見ていくと、白米でなく玄米を推奨するとか、その土地で取れる作物を大切にし、地産池消で旬の食事を摂るべきだとか、まさしく近年の健康食ブームの先駆け的発言が並んでいます。また、石塚はナトリウムとカリウムのバランスが健康の要であるとも説いているのですが、ナトリウム過剰の原因は食塩では無く、肉食と魚食であると唱え、特に肉食を戒める発言もしています。ちょっと原文を引用してみましょう。

 「嗚呼何ぞ学童を有する都会魚塩地の居住民は殊に家訓を厳にして体育知育才育は即ち食育なりと観念せざるや願はくば地位地形天候を異にする欧魯巴(ヨーロッパ)大陸の食政法に偏信せず雷同せずして学理と実際とに彼を忘れずに我国中古往時の食養方法と料理法と化学的の食養法とに意を留めて忘故懐新の人面獣心即ち大慈悲心のなき獣食貪心に近寄るの弊なく爰(ここ)に顧慮せられんことを希望す」(増訂7版より。旧字体を新字体にした他は原文のまま。)

「人面獣心」になるというのは、すごい表現ですが、乱れた食生活が原因でキレる子どもが大勢いるといわれている昨今、あながち暴論とは言えないような気もします。いずれにしても、「食育」によって肉食を減らし、欧米式の栄養学に付和雷同せず、伝統食を遵守、洋食は否定するというのが基本的思想のようです。私は、この裏に明治の富国強兵の時代精神があると思うのです。

 
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